菊は日本で最も古くから描かれて桜と同様に非常に愛されている花文様で、長寿の願いを込めた瑞祥文様です。何千と折り重なった菊の花びらの線一本一本が、上から下へと一息に筆で描かれたもの。蒔絵の技法の中でも立体感を与える研ぎ出しが光る逸品。一つとして同じ表情を持たない菊の花は、線の太さ、金や銀の色の明るさ、粒の大きさや密度、ところどころにヤコウガイを花の中心に据え、青い光が新たな表情を加えています。 この作品には、日本ならではの空間美が施されています。間や空間を美と据える“引き算の美”が菊の文様の重なり方にも見て取ることができます。 さらに、下部には、自然の光を放つヤコウガイが散りばめられ、幻想的な世界が描かれています。菊の花が、まるで吸い込まれていくかのように段々と薄い線と色で消えていく様子もまた、見る人にそれぞれの夢物語を空想させることでしょう。


クリストフル190年の歴史は、ヨーロッパの美術・芸術史と多くのアーティストの才能により培われ、ブランドの信念である「伝統と革新」を具現化することにより創られてきました。
そのクラフトマンシップのマイルストーンを巡る旅として、ブランド史において大きな意味を持つ‟ジャポニスム“とブランドの核となる‟クラフトマンシップ”へのオマージュコレクション「MOOD Christofle x Junichi Hakose」がこのたび誕生しました。
漆工芸の第一人者 箱瀬淳一氏とコラボレートし、クリストフルの“革新”を形にしたアイコニックカトラリーセットMOODに日本の‟伝統“を形にし継承するクラフトマンシップの漆塗り、そして美しき蒔絵が施された合計7デザインの芸術的作品が息吹を上げます。
アーティスト漆芸家 箱瀬淳一


1955年 石川県輪島市に生まれ、蒔絵師田中勝氏に師事の後輪島に自身の「箱瀬工房」を構える。
漆芸の第一人者として国内での個展の他、海外ではヨーロッパを中心にスイス、イタリア、フランスなどで個展を開催。
常に、伝統に真摯に向き合いながら、自身が手掛けることによって新しい形の伝統を生み出し、次の世代へと伝えていきたいとの信念を持ちながら、日々唯一無二の線を描き続ける。


野の小菊【限定1点(売約済み】

吉野桜【限定8点】

日本を代表する桜の名所奈良の吉野山に山一面に咲く吉野桜を描いた作品。吉野山の桜は1300年も前からご神木として崇拝され、 春には日本古来のヤマザクラを中心に約三万本の桜が咲き誇り、その光景はまさに豪華絢爛。 この作品にもまた、日本ならではの空間美が施され、その間を作ることから山桜がまさに今舞い落ちるかのような躍動感を感じさせる配置と配色となっています。 花は一つとして同じ配色の物はなく、ピンクの濃淡、金と銀粉の蒔く加減、またケース上部の漆の黒に浮き出るようなピンクの花びら、下部の赤との対比により明るい発色の桜が描かれ、一つの作品から様々な桜の表情が窺えます。 カトラリーは、あえて落ち着いた表情で朱色の上に金と銀の桜を描きました。
祝いの宝尽くし【限定8点】

宝尽くしは、中国から室町時代に日本に伝えられた日本の伝統的文様で、様々な宝物を描いた縁起のよい吉祥文様。七福神の大黒天が持ち振れば欲しいものが手に入るという縁起ものの「打出の小槌」、平安時代に希少価値の高いスパイスとして日本に渡来したクローブはその希少性から吉祥文となった「丁字」、重さを量るときに用いたおもりの「分銅」、お経が書かれた「宝巻」、秘伝などを記した「巻軸」、その他にも「隠れ蓑」、「隠れ笠」、「金嚢」など、様々な縁起物が描かれています。それらに加え、今の宝、50年後の宝を描きたいという作者の思いを込めて、縁起の良い文様である黒く締まる羽が印象的な「鶴」、「松竹梅」などが描かれています。 明るくも上品な朱色と文様を締めるように、落ち着いた金の線を描き、上部には赤みを帯びた金箔が光りと共に作品を華やかな印象に演出します。所々にブルー、ピンク、紫のヤコウガイの光があしらわれアクセントとなり、今と未来を感じる祝いの宝尽くしです。
天の龍【限定8点】

古代中国では四瑞(麟・亀・龍・鳳凰)として尊ばれた想像上の瑞鳥で、邪気を追い払い災害を避け、縁起の良い力をもった幸運をよぶ生き物として崇められ権威の象徴でもあります。作品には2体の龍が前後に1体ずつ登りゆく様子と下へと降りゆく様子が描かれています。これは、守り神とされる龍が、いかなる方向からも守ってくれるという作者の願いが込められています。 本作品の見どころは、その躍動感と生きているかのような目や表情にあります。 龍は目によって強くも優しくも表情が変わりますが、目に青緑に光るヤコウガイを据え、光の差しようによって表情が変化し、その自然が織りなす光の加減によって様々な表情を見せます。明るい金粉を撒き、研ぎ出しすることで、黄金の龍の道が躍動感あふれた形で表現されています。また、カトラリーには七宝などの小紋が龍と呼応したデザインで描かれています。


宙の天馬【限定8点】

ケースには、紀元前1000年以上前に西アジアからギリシア・ローマ、また中国・日本へとシルクロードにのり各地に広がった翼をつけた夢の馬「天馬」。伝統的に描かれる天馬にある翼を、あえて描かず日本古来の馬として描きました。 直径0.03ミリの金箔を撒き、0.015ミリまで研ぎ表面に浮き上がらせ、赤く光る宇宙の光を表現。ヤコウガイと金で表現された星と星とを、真っ直ぐ一息に描いた細い線で結び、漆黒の夜空に輝きと緊張感をもたらします。“漆黒の闇”とも言われるがごとく漆ならでは黒の深みが、宇宙のような空間を作り出し、その空間を3頭の天馬が自由気ままに駆け抜けます。 カトラリーには、同様に天馬が空を駆け抜ける様子が描かれ、コーヒースプーンはケース下方部同様の落ち着いたブルーの漆が塗られ、その上には星座が細やかに描かれています。
天地鳳凰【限定8点】

愛と自愛の象徴である鳳凰。古代中国では四瑞(麟・亀・龍・鳳凰)として尊ばれた想像上の瑞鳥で、「聖天子が現れる時に姿を見せる瑞鳥」とされ吉祥文様の一つ。鳳凰は桐の木に宿るとされ、桐もまた神聖な木とされています。 ケースには、3羽の鳳凰が描かれ、カトラリーには、桐が凛とした佇まいで描かれています。 3羽の鳳凰が漆黒の深い天空を舞い、鳳凰の下にはヤコウガイが撒かれ、自然が創り出す美しい光がまるで星のよう。鳳凰の羽から零れ出る美しい光は、金を撒いて研ぎ出すことで立体的に表現されています。 羽には、金、銀、パラジウムの色の陰影を使うことで、鳳凰の神々しさと上品さを表現しています。
「今回、クリストフルとコラボレーションをするにあたり、どのように‟伝統“を表現したいか考えたとき、やはり日本の伝統的文様にその思いを込めたいと考えました。
7つのテーマに選んだモチーフ「菊」「桜」「宝尽くし」「龍」「鳳凰」「天馬」「蝶」は、どれもが日本の伝統的文様です。私は今回に限らず、漆工芸、蒔絵というものに向き合う時、常に、今生きている私が描き継承し、次の世代に新しいものとして残していくことが大切だと考えています。伝統の中に新しい何かを描き、新たな伝統として次世代に繋いでいく。
今回の作品にもまた、朱の色味、ぼかし、線、金銀の色味、表情、空間、その一つ一つに私が表現したい‟新しい形の伝統“の息吹を吹き込みました。」






「金属と漆は決して新しい組み合わせではなく実はとても相性が良いのです。
その昔戦国時代、武将が身に着けた鎧兜や大砲に、漆の焼き付け技法を用いて強度を高めたり錆止めとして使用していた歴史があります。そのため、私が初めてクリストフルのMOODを目にしたとき、この歴史が頭をよぎり、必ずや漆と相性の良い素材であろうと確信しました。
また、MOODの柔らかい卵型のフォルムが、蒔絵を描くのに今までに手掛けたことのない絶妙な空間を作り出すパレットだと感じました。」






The Makie is drawn out after sprinkling on gold powder, coating the entire object with lacquer and polishing the surface after it dries. The Makie technique creates a three-dimensional aesthetic. The process is completed with a total of 12 steps from the undercoating, which is referred to as yakitsuke, to the final polishing.









